※この記事は、GAOGAOの自社メディア「CREATOR HUB」に2020年10月28日 に公開されたインタビュー記事を転載したものです。
前編後編の2回に分けてお届けしています。
toCビジネスに切り替え、会社に貢献できる事業を開発する
―新たな事業を立ち上げたんですよね。
はい、私が転職する前から弊社は、カーラッピング広告プラットフォーム「FlareAd」を運用していました。これは、自家用車の外観を広告面として活用することで報酬を得られるサービスです。加えて、どの場所を、どの時間に、どのように走行したかも把握することができます。
私は、それを活用し、エンハンスした自動車の運転動態とドライバーの挙動を分析するサービス「FlareAnalytics」を開発しました。
このサービスでは、ドライバーのスマホからセンサーデータを集めることで、急加速、急ブレーキ、Uターン、スピード違反などの運転動態と、ドライバーの挙動を判定することができます。
ただ、開発当初、実際に危険運転をした時に、どのようなデータがスマホから得られるか分からなかったため、タイ人スタッフに郊外で危険運転をしてもらい、その車に同乗することでデータを収集していました。あれは怖かったですね。(笑)
そうして集めたスマホのセンサーデータを使って、データサイエンティストチームと議論しながら日々改良しています。
―また新たにアプリも開発されたんだとか。
この「FlareAnalytics」を導入した、社用車ドライバーの勤怠管理アプリ「Flare Dash」の開発も行いました。タイでは、企業が従業員用に利用している勤怠管理サービスでは、ドライバーの勤怠管理はできないため、今でも紙などを利用したアナログな勤怠管理がなされています。
しかし、「FlareDash」を使うと、スマートフォンとアプリケーションのみで、ドライバーの勤怠打刻が可能となります。また、それだけではなく、勤怠の簡略化、不正防止、勤怠のデータ化も実現しました。
加えて、「FlareAnalytics」によって、ドライバーの運転技術判定サービスも活用されているため、ドライバーの運転技術が一緒に測定できるようになっています。そうすることで、雇い主が客観的なデータに基づいてドライバーを評価できるため、危険運転をする傾向にあるドライバーを早期に見つけて教育もしくは変更することで、事故防止にも活用してもらっています。
タイは交通事故死亡数が世界2位なので、私が開発している危険運転を判定するサービスで、交通事故を少しでも減らしたいと思っています。こういう社会意義のある仕事はやりがいがありますね。
また、タイ以外の周辺アジア各国にも展開しており、自分が開発しているサービスが国を超えて広まること、より多くの国の人に使ってもらえることは嬉しく、海外でエンジニアとして働く上での醍醐味だと思っています。
―やりがいを感じながら、生き生きと働かれている姿が想像できます。そのほか、海外で働いて良かったと感じている点はありますか?
日本人、外国人に関係なく、優秀な同世代に出会えたことですね。
日本人で言うと、タイでは同じ年齢、年代で集まる飲み会が定期的に開催されており、友達を作るのには困りませんでした。そこで出会ったいろんな業界の駐在員や、自分のように海外で働いてみたいと思って挑戦している友達との会話はとても楽しく、良い影響を受けました。
また、そんな同世代は私のいるIT業界だけではなく、メーカーや商社、金融など様々な業界で働いています。そのため、日本では出会えなかった業界の人たちとも多く繋がれ、その業界特有の話やトレンドなどをカジュアルに聞けたことは、とても勉強になりました。自分の視野が広がったのを感じています。
また、外国人との出会いで言うと、やはり海外で暮らしている分、日本にいた時よりも多くの外国人の友達ができましたね。コロナ前にはミートアップが定期的に開催されていて、タイ人はもとより、欧米人の駐在員とも知り合う機会が多くありました。
加えて、特に印象に残っているのが、ロシアのITカンファレンスに参加したことです。スタートアップによるピッチ(短いプレゼンテーション)で審査員として採点する機会があり、狩猟SNSなどロシアならではのサービスを知ることができて、面白かったです。
また、ロシアの大学でコンピューターサイエンスを勉強している学生たちと交流し、良い刺激を受けました。
そのほか、英語のハッカソンに参加したり、英語のプレゼンテーションに挑戦したりする機会を得られました。ハッカソンでは優勝して、賞金ももらいました。そこでは、タイ人の大学生エンジニアに多く出会いましたが、日本の大学生と同じくらいのレベル感だと感じました。ベトナム人エンジニアとも一緒に働いていますが優秀な人が多く、日本人エンジニアも負けてられないと感じています。
―では、逆に残念に感じていることはありますか?
タイの場合、現地でアプリケーションエンジニアとしての知識、技術を向上させられる勉強会があまりないことです。
コロナ中・後から変わっているかもしれませんが、コロナ前にはオフライン、オンライン共にエンジニア向けの勉強会が少なかったので、iOSやAndroidの情報をアップデートするためには、自分から積極的に情報を取りに行く姿勢が求められました。
これは、エンジニアとして当たり前になすべき姿勢ではありますが、タイは日本にいるときに比べて圧倒的にアプリケーションエンジニアの数が少ないので、意識的に勉強する必要があります。
例えば、サイバーエージェントで働いている時であったならば、周りのエンジニアとの他愛もない雑談で、最近どういうライブラリーを使っているのか、どういうツールを使っているのか、といった、ちょっとした情報交換が簡単に出来たのですが、海外ではそうはいきません。
コロナになって、大変ことがたくさんありますが、オンライン勉強会が普及してきているという点では良い変化だと感じており、今後のさらなる広がりに期待をしています。
世界を舞台に面白いプロダクトを作り続け、後悔ない人生を送る
―ありがとうございます。それでは、佐々木さんの今後の展望をお聞かせください。
面白いプロダクトを作り続けられるエンジニアでいたいと思っています。
私はモノづくりが大好きで、週末には仕事とは別に、自作のアプリ開発をするなど、プロダクト作りがライフワークになっています。
また、一エンジニアとしては、事業に貢献できるエンジニアになりたいと思っています。自分がプロダクトを生み出すときにはマネタイズまで考え、会社として、事業として、軌道に乗せられるプロダクトかどうかを考えて開発していきたいですね。
今は、今後もタイを拠点に働き続けたいと思っています。また、もう一度大手で働こうとは考えておらず、これからもスタートアップで0から事業を作っていきたいと思っています。スタートアップのように、事業と自分がより近いところで働けることに、やりがいを感じています。
目標は、街を歩いていて、ふと隣の人のスマホ画面が目に入った時に、自分の作ったプロダクトが使われているところを目にすることです。ユーザーに選ばれる、喜ばれる面白いプロダクトを作り続けていきたいです。
―モノづくりへの熱い想いをひしひしと感じました。それでは最後に、これから海外を目指すエンジニアに一言お願いします。合わせて、佐々木さんが実践されている英語勉強法についても教えてください。
人生は一度きり。海外で働きたいのならば、挑戦してみるべきだと思っています。
現に私は、海外就職に挑戦して心から良かったと思っています。
もちろん、サイバーエージェントを辞めるとき、迷いはありました。日本の大手企業を辞めて、海外のスタートアップ企業に移ることに対して不安があったからですが、40歳、50歳になって自分の人生を振り返った時に、今ここで挑戦しなかったら絶対に後悔すると思ったことが、力強く背中を押してくれました。
また、私の場合は自分を追い込んで奮い立たせていたところもあります。
サイバーエージェントを辞める半年ほど前から、上司に対して、新機能の開発を終えられたら辞めると宣言し、後戻りできないようにしていました。挑戦したいけど一歩踏み出せないと言う方には、このように区切りを設けて公言する、宣言することもおすすめです。
今の私は、40歳、50歳になっても自分の人生に後悔しない自信があります。これは、すごく幸せなことだと思っています。
また、一度海外に出て働く、生活することを経験したため、どこに行っても働けるし生活できるという自信も生まれました。これは、今後の私のキャリアにとって、とてもプラスになると確信しています。
是非、自分の人生に後悔がないように行動してもらえればと思います。
最後に、私の英語勉強法についてですが、渡航前にはオンライン英会話を受講していました。ここで日常英会話はマスターしましたね。
タイに移住してからは、英語で雑談ができるようになりたいと思い、イギリス人が主催しているミートアップに参加していました。
これは、私と同じように、タイにあるスタートアップで働いているエンジニアが集まる会で、週一で開催されていました。いろんな国の人と話せるので、とても楽しかったですね。ここで仲良くなったタイ人の友人とは、ご飯を食べに行くなど親交を深めながら、生きた英語を学ばせてもらっていました。
ご興味ある方は、ぜひ参加してみてください。
日本を飛び出す前には、悩むこともあると思います。そんな時には、今一度自分と向き合い、一度きりしかない自分の人生に後悔が残らないよう、どんな選択をしていくのがベストなのかを考えてみるといいと思います。
皆さんの挑戦を応援しています!
編集後記
穏やかで柔らかな第一印象の佐々木さんでしたが、お話を聞いていくうち、プロダクト開発にかける熱い情熱を燃やし続けている方なのだと分かりました。
新卒から新規事業、子会社の立ち上げをいくつも経験し、それらがクローズするたびに悔しい思いをしながら成長してきた佐々木さん。濃密な5年間でエンジニアとしてのスキルを醸成しただけでなく、ビジネス人としての戦闘能力も高められたからこそ、今、会社の成長や事業のマネタイズまで見渡せるエンジニアになられたのだと思います。
そんな力は海外に出られてからも遺憾なく発揮されており、スタートアップという少数精鋭のチームでも存在感を放っていらっしゃいました。
今後、どんな面白いアプリ、サービスを開発されていくのか。楽しみでなりません。
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