こんにちは、GAOGAOでソフトウェア開発者をしているonukichiです。少し前からWeb3のキャッチアップを始め、つい最近NFTを初めて購入しました。購入したのは、「デジタルアート×電子住民票」としてのNFTを標榜する、Nishikigoi NFTです。
最近、日本でもDAO(Decentralized Autonomous Organization)の注目度が急速に高まっていると感じます。DAOは、中央集権的なリーダーシップを持たずに、ミッションに向けてメンバーが自律的に機能する組織形態のことを指します。スマートコントラクトによって、組織のさまざまなプロセスを安全かつ透明性を持って実行可能です。
実際にDAOを作成する際は、DAO作成ツールを用いて作成されるケースが多いです。そのようなDAO作成ツールとして最も有名なのが「Aragon」です。
今回の記事では、Aragonの概要、Aragon Clientの主要機能、利用事例について解説します。
Aragonの概要
Aragonとは
Aragonとは、組織がEthereumブロックチェーン上でDAOを作成・管理できるサービスです。2016年にLuis CuendeとJorge Izquierdoによって設立されました。
現在、Aragon上でDAOを立ち上げるには、Aragon ClientとAragon Governの二つの方法があります。今回はAragon Clientを取り上げます。
Aragon Clientには、作成したい組織の形態に適したDAOテンプレートが用意されており、それをもとにDAOを簡単に立ち上げ可能です。以下の3つが主要機能になります。
- ガバナンストークンの作成、配布
- 投票
- 資金管理
ガバナンストークンは、発行元DAOの運営方針について、投票権を得ることできるトークンです。
Aragon Clientの主要機能
ここからはAragon ClientでRinkebyテストネットワークにDAOを作成し、実際のサービス画面を見ながら、主要機能について解説していきます。
DAOの作成
まず最初に作成するDAOに適したテンプレートを選びます。今回はCompanyを選択します。
次に作成するDAOの名称を設定します。
次に、Voting(投票)の設定をしていきます。
SUPPORTは、提案が承認されるために「Yes」の投票が必要とされるトークンの相対的な割合です。例えば、「SUPPORT」を50%に設定した場合、可決されるには、投票に使用されたトークンの50%以上が「Yes」に投票する必要があります。
MINIMUM APPROVALは、提案が承認されるまでに、トークン供給量の何パーセントが「はい」に投票する必要があるかを示すものです。例えば、「MINIMUM APPROVAL」を20%に設定した場合、可決されるには、トークン供給量の20%以上が「Yes」に投票する必要があります。
VOTE DURATIONは、トークンホルダーが投票に参加できる期間です。
次に発行するガバナンストークンの設定をします。トークン名、トークンシンボルを設定し、初期にトークンを配布するホルダーのアドレスと数量を入力します。
最後に設定内容を確認し、Launch your organizationをクリックし、DAOの作成は完了です。
トークンの配布
トークンのページでは、トークンホルダーの一覧や、トークンの総供給量などの情報を閲覧でき、またトークンの配布もできます。
トークンの配布は、受け取り先のアドレスと量を入力し、トランザクションを作成します。その後Votingが作成され、DAO作成時に設定したVoting設定に基づき、Votingがパスされた後に、トークンの配布が実行されます。
資金管理
資金管理のページでは、DAOが保有する資産の残高や過去の送金履歴を確認したり、新規の送金を作成できます。
Transfersには、過去の送金履歴が表示され、送金日、送金先または送金元のアドレス、送金に関する追加情報を含む参照、送金額などの情報が表示されます。
Deposit:DAOに資金を預け入れる
DAOに資金を預け入れるには、Depositを使用します。「New Transfer」ボタンをクリックし、「Deposit」タブを開き、入金したいトークンを選択し、金額とオプションの参照メモを入力し、「Submit deposit」ボタンをクリックします。
Withdrawal:DAOから他のアドレスへ資金を移転する
DAOから他のアドレスへ資金を移転するには、Withdrawalを使用します。「Withdrawal」タブを開き、送金先のアドレス、送金するトークン、送金額を入力します。全て入力後、「Submit withdrawal」ボタンをクリックし、完了できます(権限がある場合)。
App Center
App Centerのページでは、Aragon appsの一覧を閲覧できます。Aragon appsはDAOにインストールすることで、DAOの機能を拡張できるアプリです。インストールは、現状ではAragonのCLIツール経由で行う必要があります。また独自のAragon appsを作成し、DAOにインストールも可能であり、非常に拡張性が高いと感じました。
Aragonの利用事例
Aragonで立ち上げられたDAOの数は1,700以上にもなり、9億ドル以上の資産が保管されています(2021年6月)。AAVE、Curve Finance、Decentralandなど有名プロジェクトのDAOでも採用されています。
【参考リンク】
Powered By Aragon
事例:Decentraland
DecentralandはEthereum上のメタバースサービスで、MANAトークンでサービス内の土地の仮想区画をNFTとして購入できます。
DecentralandのDAOは、スマートコントラクトにAragonを使用して構築されており、提案と投票の管理にはsnapshotが使用されています。snapshotはオフチェーンのガスレス投票プラットフォームで、提案がsnapshotのコミュニティによって渡されるたびに、AragonのEthereumメインネットにコミットされます。
【参考リンク】
How the DAO works | Decentraland
Aragonの大規模なアップデート
Aragonは2022年4月26日に、大規模なアップデート計画を発表しました。新しいAragonアプリ、スマートコントラクト、SDK、デザインシステムを開発中とのこと。
以下はアップデートのロードマップ、現在はフェーズ1にあり、ユーザーとステイクホルダーの意見を取り入れて、調査、設計、開発を行っている段階です。
現在のAragonの製品ポートフォリオ(Aragon Govern、Aragon Court、Aragon Voiceなど)は、1つの製品に統合し、よりシンプルな体験を構築することを目指しているとしています。
Early Access Waitlistを募集していたので、早速登録しました。
【参考リンク】
Rebuilding Aragon’s foundations for the future
終わりに
今回はAragonの概要、Aragon Clientの主要機能、利用事例について解説しました。
Aragonは、サービスのドキュメントや開発者向けドキュメント、Aragon公式ブログの内容が充実していて、素晴らしいと感じました。さらにDAOの基礎を学べる「DAO Education」もあり、一読の価値があります。
またAragon自身もAragonを用いて、「Aragon Network DAO」というDAOを構築・運営しています。Aragon Network DAOを通して、Aragonが企業構造から脱却し、ANT(Aragon Networkのトークン)ホルダーによって所有・管理される完全な分散型組織への移行を目指しているとしています。Aragon Network DAOも非常に興味深く、次回調査してみたいと思います。
【参考リンク】
Aragon Network DAO
AN DAO Launch
GAOGAOではWeb3領域をメインとする部署があり、積極的にWeb3の調査、開発業務を行っております。今後もWeb3に関するさまざまな情報発信を定期的に行ってまいります。
Web3領域は変化が早く、最新の情報をキャッチアップするには英語文献をメインに探さなければなりません。そういったこともあり、この度個人でTwitterの英語アカウントを作りました。主にWeb3やプロダクト開発について、英語でツイートします。ぜひフォローお願いします!
参考文献
自律分散型組織(DAO)の作成・運用を支援するAragon
DAO運営を簡単に実現できる「Aragon」の解説 | TOKEN ECONOMIST
Bybit Learn | Aragon (ANT): Why You Should Care
DAOの作成方法 | Binance Academy
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