GAOGAOメンバー図鑑 インタビュー キャリアインタビュー 人物図鑑 海外クリエイター図鑑

東南アジアは、エンジニアがグローバル・マネージャーとして成長できる場所(吉田健人さん)

Pocket
LINEで送る

※この記事は、GAOGAOの自社メディア「CREATOR HUB」に2020年9月9日 に公開されたインタビュー記事を転載したものです。

世界で活躍するクリエイターに、海外で働く上でのキャリア論を語っていただく本企画『STORY』。ここでは、一歩先を行く先輩クリエイターのグローバルな挑戦を取り上げ、次のキャリアとして、世界で活躍することを目指す日本人クリエイターを、より多く輩出していくことを目的としています。

第一回目の今回は、タイでテクニカルアドバイザー/ソフトウェアエンジニアとして働く、吉田健人さんです。

実は吉田さん、元々は海外で働くことに興味がなかったんだとか。そんな彼が、なぜ今のようなキャリアを歩むようになったのか。学生時代から今までを振り返っていただき、海外で働くに至った経緯や実際に働く中で感じていること、そして今後どういった未来を描いているのかなどを伺いました。

これから世界に挑戦しようと考えているエンジニア、特に、いちプレイヤーとしてだけでなく、マネージャーとして世界で活躍したいエンジニアの方は、是非ご覧ください。

吉田健人

早稲田大学大学院 情報理工学研究科卒業後、日本経済新聞社で約3年間iOSエンジニアとして、日経電子版アプリと紙面ビューアーアプリの開発に従事。エンジニアとしての市場価値の向上、差別化を図るために海外転職を決意し、2018年からバンコクの自動車業界の会社に転職。エンジニアの組織作り、アプリ開発、CDP (Customer Data Platform) 構築など多種多様な仕事を任され、会社のDX(デジタルトランスフォーメーション)に貢献すべく日々奮闘している。

―記念すべき第一回目のインタビュー、ご快諾くださりありがとうございます。早速ですが、昔から海外で働くこと、エンジニアとして働くことを目標にしていたんですか?

いいえ、それが全然。(笑)大学生の頃までは、想像もしていませんでした。エンジニアリングに興味を持ったのも、大学1年生の頃です。

大学入学当初は飛行機に興味があって、漠然と機械工学を専攻しようと思っていました。でも、1年生の講義でCプログラミングに出会って、面白いなと。その時、友人がソフトウエアベンダーでアルバイトをしていたこともあり、私も紹介してもらって現場で働かせていただきました。Windowsのアプリケーションを作っていましたね。

そこで実践を通して、プログラミングの基礎的な部分を学んだのですが、次第にプログラミングに魅了されていきました。今まで全く知らなかったインターネットの仕組みなど裏側が分かるようになってくるにつれ、どんどん熱中していきましたね。

元々熱中しやすく、一つのことを突き詰める性格で、プログラミングとの相性が良かったんだと思います。プログラミングは奥が深く、新しい情報も日々出てきます。探求しても探求しても知らないことに出会えるので、飽きません。

―海外で働いている方は、昔から海外に興味があった場合が多い印象だったので、意外でした。どのタイミングで海外に興味を持ったのでしょうか?

最初に興味を持ったのは、大学卒業間近の冬ですね。ご縁あって、フィリピンに2週間ほど語学研修に行ったんです。

それはもうスパルタ合宿で、軍隊みたいなところだったんですけど、その時に初めて英語環境にどっぷり浸かって。今まで英語環境に身を置いてこなかったけど、英語は話せた方がいいのかなと、漠然とそう思うようになりました。

―なるほど、でもそこですぐに海外に飛び込んだわけではないですよね?

はい。(笑)新卒では、日本経済新聞社に入りました。

―日本経済新聞社を選んだ理由は何だったのでしょうか?

新聞社などのメディアが良かったとか、業種で選んだわけではありません。学生時代、たまたま日本経済新聞社のインターンシップに参加していて、そこで感じた社内の自由な雰囲気が心地よかったのが、まず一つ目の決め手ですね。裁量権を持って働けそうだなと好印象でした。

もう一つの決め手は、0→1の開発に携われそうだったことですね。私が入社した時、ちょうど日本経済新聞のiOS版紙面ビューアーアプリのリニューアル時期だったんです。

既にあるアプリケーションの改善活動だけではなく、新たにUIUXデザインなんかも考えながら作れることにやりがいを感じました。実際に0→1の開発に携わらせていただき、とても勉強になりましたし、働いていて楽しかったですね。

こんな感じで会社の雰囲気も良く、働きやすい職場であったため、不満はありませんでした。仕事も面白かったですし、辞めようと思ったことは一度もありませんでしたね。

―そんな中、3年ほどで退社することになるんですよね。海外で働くことは、先ほど教えて頂いたフィリピンでの経験から、ずっと目標になっていたんでしょうか?

そこまで強く思っていたわけではありません。でも、興味は持ち続けていました。

学生時代に比べ、社会人になってからの方が、海外のエンジニアリング情報を身近に聞くようになっていたことも大きいですね。あとは新聞社で働いていたこともあり、よく関連記事を読むようになっていました。

それに、フィリピンでの短期語学研修をキッカケに英語を話すこと、使うことにはその後も興味を持ち続けていて、オンラインスクールに通うなど英語の学習は続けていました。

そのほかにも、有難いことに仕事で約1種間ほど、シリコンバレーで行われるカンファレンス(WWDC)に参加する機会もいただいていました。

英語を使って仕事をすることへのモチベーションは常にある一定程度は保てていて、徐々に海外への想いを醸成していったという感じですね。

―そんな中、ほかにも沢山の国がありますが、タイで働くことを決められました。なぜ、タイで働くことにしたのでしょうか?

タイにこだわっていたわけではありません。ただ、タイを旅行で訪れたこともあって、いい国だなとは思っていました。

タイで働くようになったのは、ご縁ですね。

その当時、タイに駐在することが決まった学生時代の友人がいて、壮行会をしたんです。純粋に、いいなと思っていました。そうして少し経った頃、その友人に「タイでエンジニアを探してるんだけど、興味ない?」と声をかけられたんです。

今思い返せば、話をもらった時点で、もうオファーを受けることは決めていたんだと思います。

その後、その友人や上司になる予定の人と食事に行き、どういうことが会社の課題で、だから私に何をしてほしいのか、何を望んでいるのかをざっくばらんに聞かせていただきました。それが面接みたいなもので、正式な面接はなかったですね。

会社のビジョンに対して、なぜ今エンジニアが必要なのかを聞かせてもらえて、心が決まりました

2018年の9月にお声がけいただいてから、11月には前職に辞意を伝え、残務をやって2018年1月には転職してタイに来ていました。給与も上がるし、ヘッドハンティングのような状況だったので、迷いはなかったですね。

―タイでは、どのような仕事をされているのですか?

日系の自動車関連会社でテクニカルアドバイザー/ソフトウェアエンジニアをしています。渡航前は、モバイルアプリを作る前提でタイに来ましたが、今の職務内容は多岐にわたっていますね。

現在では、会社の戦略に沿って顧客サイドに近いデジタルアプリケーション全般を作っていて、データ活用の基盤づくり、分析なんかもやっています。元々、会社の戦略に沿って必要な開発をしたいと思っていたので、そういう意味ではやりたかったことが実現できていますね。経営に近いところで仕事が出来ている点は、やりがいの一つです。

―やりたいことが出来ている、いいですね。そのように海外で働く中、ほかにもポジティヴに感じていることはありますか?

先ほどお話しした、会社の戦略に沿って開発が出来ているということにも通じるのですが、会社の経営層の人と近い距離で働けていることですね。

Directorと近い距離で話せるので、会社の戦略に沿ってスピーディーに開発を進められるんです。これやりたい!やるべき!などと声を上げると、ちゃんと任せてもらえる環境なので、とても働きやすいですね。

このように、PDCAを速く回しながら働けることにやりがいを感じるエンジニアの方は、結構いらっしゃるのではないでしょうか。

また、日本人が少ない職場環境ということもあって、私一人で意思決定をしなければならない場面が沢山あります。そのため、新卒の時から思っていた裁量権を持って働きたい、という軸も実現できていますね。一例で言うと、自分でソフトウエアベンダーも選ぶようになりました。

ほかにも、広告代理店の方やコンサルティング会社の方など、社外の他業種の方と会社の代表としてやり取りするようになりました。日本にいた時にはできなかった、エンジニア以外の方たちとの意見交換の場が増え、ミートアップにも不定期に参加しています。日本にいた時に比べて、確実に視野が広がりましたね。

あとは、純粋に英語力が付きました。個人的な見解ですが、IT業界にいるタイ人は、比較的英語を使える人が多いように思います。お陰で、スピーキング力とリスニング力が向上しました。

また当たり前ですが、業務上の書類のほとんどが英語なので、英語での書類の書き方などビジネス英語の基礎的な部分も勉強になりました。日々、自分の成長を感じています。

そして、もっと英語でコミュニケーションを取りたいという欲も生まれるので、今でもオンライン英会話を受講したり、Youtubeで為になりそうな英語の動画を見たり、Podcastを聞いたり、あとは積極的に外国人の友達を作ったりして、日々英語力向上に取り組んでいます。

入社してから2年半が経ちましたが、前職を辞めてタイに飛び込んだことに後悔はありません。

―後悔はない、とお聞きしておきながらアレなんですが(笑)、海外で働くことでネガティヴに感じていることはありますか?

うーん、そうですね、社内に日本人エンジニアが私しかいない事でしょうか。時々、孤独を感じますね。

先輩にあたる人がいない環境なので、目標にできるキャリアパスが見えない、見えづらいといった点が理由です。そのため、何もかもを自分で考えて計画し、進めていかなければなりません。でも、それを自由度が高い環境だと捉えて、前向きに楽しめる人には向いている働き方だと思いますよ。

あとは、海外だからと言って、必ずしもどの職場もフラットな職場環境ではないところでしょうか。私のように現地の日系企業で働く場合には、日本のような社内の縦割り構造は残っている場合が多いと思います。言い換えれば、年功序列とも表現できますが、気になる方には辛いのかもしれません。

ただ正直、私は気にならない性格なので困っていませんね。海外で働く=フラットな環境で働けると思ってきた人にとっては、ネガティヴに映ることだと思います。

―お話を伺うほどに、吉田さんがタイで生き生きと働いている姿が想像できます。今後、海外でどのようなキャリアを築いていきたいですか?

ビジネスに貢献できるエンジニアになりたいと思っています。

最近はDX(デジタルトランスフォーメーション)の流れが話題になっていますが、基本的に事業会社にとって、ITは会社の中でコストとして取られる事が多いですよね。それ自体がお金を生むことって、少ない。ビジネスは売上、利益を上げてなんぼの世界であることは事実です。

だから私は、数字をシビアに見られて、数字が作れるエンジニアになりたいと思っています。

また、転職する事も選択肢の一つだと思いますが、同じ会社に長くいて、仲間たちと深く信頼関係を築きながら、ずっと働き続けることにもやりがいを感じています

それは、仲間たちとの根底に強固な信頼関係があると、よりよいモノづくりが出来るとの想いがあるからです。仲間を捨てて、新しい場所で0からスタートするということは、私はリスクだと思っているんですよね。

あとは、関連しているのですが、海外で外国人スタッフを率いていけるマネージャーになりたいと思っています。社内の他拠点の外国人スタッフ、例えばアジアヘッドのシンガポールオフィスのスタッフたちとも対等に話せるようになりたいですね。もちろん、社外の外国人担当者とも、もっと円滑にコミュニケーションが取れるようになりたいです。

まとめると、エンジニアとして、いちプレイヤーで終わらず、会社を俯瞰して見られるエンジニアに成長することで、会社のビジネスに貢献していける人材になりたいと言えます。海外ビジネスに貢献できるのは、海外で働く醍醐味ですよね。これからも日本にいては出来ない経験を積んでいきたいです。

―それでは最後に、これから海外で働きたいと考えているエンジニアに向けて、一言お願いします。

これまでの私のインタビューを読んでいただくとわかると思うのですが、東南アジアで働くとなると、プレイヤーとしての能力向上を求めてくるエンジニアよりも、マネージャーなどビジネス視点を持って働くことにやりがいを感じられるエンジニアの方が向いていると思っています。そういう人の方が、長く楽しく働ける環境だと思いますね。

なぜなら、私たち日本人が東南アジアで働くとなると、現地のエンジニアを育てる需要があるからです。

当たり前ですが、日本人エンジニアを1人雇うよりは、現地のエンジニアを1人雇って現場を回せるほうが、はるかにコスト効果が高いですよね。読んでくださっている方が東南アジアに来ることを検討していらしたら、現地の人を率いてチームを作る、文化を作ることを念頭に置いて仕事をする必要があると思います。

逆に、そういったマインドのある方には是非、挑戦してほしいですね。きっと得られるものが多いと思います。 そんな方だと、ここ東南アジアは挑戦するのに最適な環境だと思っています。自分がトップになってチームを作り、若いうちからグローバルマネージャーとしてのスキルや経験が積める絶好のチャンスになると思います。応援しています!

編集後記

第一回目の取材を快く引き受けてくださった、吉田さん。終始チーム目線、会社目線で自身の仕事を捉えていたことが印象的でした。

自己成長を感じやすいプレイヤーとしての活躍ではなく、マネージャーとしてチームを率い、会社のビジネスを俯瞰しながら数字を作っていくエンジニアになりたいという強い言葉に、グローバル、特に東南アジアを拠点に働く上での覚悟のようなものを感じました。

今後、吉田さん率いるチームがどのように成長し、会社の海外ビジネスにどう貢献していくのか、とっても楽しみです。


 

グローバルクリエイターとしてのキャリアに興味のある方は、コチラよりご連絡ください

そのほか、Twitterでのお問い合わせも受け付けています

Pocket
LINEで送る